加圧トレーニングで末端肥大症になる?
「加圧トレーニングで末端肥大症になる」
ある時、加圧トレーニングのトレーナーではないあるパーソナルトレーナーが、こんな説明をクライアントにしているのを耳にしました。
私も以前、このブログで「加圧トレーニングの効果がやや誇大されすぎている」と書きましたが、さすがにこのパーソナルトレーナーの言葉にはびっくり してしまいました。もちろんこれは現時点で明らかに間違った情報といえます。その余りにも短絡的な説明に、加圧トレーニングに対する、ネガティブセールス (評判を落とす)を感じたものです。
このトレーナーの説明の理論的根拠は、成人期に成長ホルモンが過剰に分泌されて起こる症状の一つに、「巨人症」などと並んで手足や指先が異常に太 く発達する「末端肥大症」という症状があるからです。加圧トレーニングは安静時の百倍もの成長ホルモンを分泌します。この成長ホルモンの分泌に よって筋肥大を引き起こしたり、代謝を高めたりすることが加圧トレーニングの一つの大きな効果になるのですが、このトレーナーはなまじ上記のことを知識として知ってい たために、自分の中で勝手に成長ホルモンの過剰分泌=末端肥大症と考えてしまったわけです。自分で考えるだけなら問題ないのですが、それを確認もせずにク ライアントに説明してしまうところに考えの浅はかさを感じます。
人間の身体の中のホルモンの作用というのは多くの制御システムが働いており、非常に複雑なものです。成長ホルモンが大量に分泌されたからといっ て、それがそのまま直接作用して末端の関節や組織を肥大させるわけではありません。内分泌の研究者に話を聞くと、まだまだ分からないことの方が多いという くらいです。
前のブログでも書きましたが、通常のトレーニングでも成長ホルモンは大量に分泌されます。ではハードなトレーニングをしていると末端肥大症にな るのでしょうか?そんなことはありません。トレーニングをしたことのある人だったら、いくらトレーニングしても筋肉が増えない、という思いをしたこともあ るでしょう。成長ホルモンが出たからすぐに筋肉がつくわけではないのです。末端肥大症も同じことで、単純な成長ホルモンの分泌だけが原因ではありません。 また末端肥大症の場合は途切れなく異常な量の成長ホルモンが血液中に分泌されており、何百倍といってもトレーニング後の一時の分泌である加圧トレーニング や通常のウエイトトレーニングとは根本的に状況が違うのです。
実は「成長ホルモンの過剰分泌=末端肥大症、巨人症」というのは生理学の教科書によくのっている事例で、このトレーナーは教科書的な知識をそのままクライアントに説明してしまったのです。少し考えればそのまま当てはめられないことが分かりそうなものですが…
人間の身体にはまだまだ分かっていない未知の部分が多く存在します。科学的にはっきり説明のつかないこともまだまだ多く、医学にしろ、トレーニングの知識にしろ、未知なものと科学的なものの溝を埋める方法として、経験的な知識や方法が存在しているのです。
明らかに誤った知識をクライアントに伝えるのは、パーソナルトレーナーとして罪だと私は思っています。パーソナルトレーナーはクライアントへの説明にも責任を持たなければなりません。
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